ジャズサンビスタス
1965
Fermata / Som Livre
ピアノ、アルコ(弓弾き)、ハイハットによる重々しい雰囲気のユニゾンから幕を開けるBossa Jazz Trioの第一作目。Bメロからサンバのリズムにチェンジしそのままソロパートへと移行。ピアノに続きベースのソロが終了すると、徐々にテンポアップしながらテーマの旋律が演奏され、一気に高速ジャズサンバへと突入していきます。豪快なドラムソロを挟んで、もう一度テーマが演奏された後、'Take 5'のような変拍子のアウトロが付け加えられて、ようやく終了。一曲目にこのようなアレンジに凝った楽曲を持ってくるあたり、また、スピード感を重視した演奏とアレンジのバランス感覚などをみると、Manfredo Fest Trioの黒いアルバムと通じるものをひしひしと感じさせてくれます。
2曲目のイントロは前曲の重苦しい調子を引き継いだような雰囲気ですが、テーマに入るとミドルテンポのサンバに変わります。この曲のキモはなんといってもテーマ演奏後に繰り広げられるピアノとベース、ハイハットのユニゾンでしょう。合間合間を縫うドラムの豪快なフィルインも非常にカッコ良い。ユニゾンを2コーラス分演奏したのち、ピアノが8小節だけソロを取り、再びテーマが演奏され、終了。
3曲目、'Sou Sem Paz'はAmilson Godoyの実兄、Adilson Godoyが作曲したジャズサンバスタンダードです。同じく兄であるHamilton Godoy(非常に紛らわしい)が在籍するZimbo Trioや、Airto Moreiraを擁するSansa Trioなど多くのコンボで取り上げられているので聴き比べてみるとそれぞれの違いがみえてきて、面白いです。戻りテーマ中に繰り出される2拍3連のテンポによるワルツへのリズムチェンジが効果的に感じられます。
4曲目の'Disa'は、ハーモニクスを伴うベースのオスティナートが特徴的なリラックスしたボッサ調のバラードで、全体の箸休め的なナンバーといえるかもしれません。5曲目、'Resolução'は'Sou Sem Paz'と似た雰囲気を持つマイナー調のサンバです。Bメロで展開されるカリブ風の呪術的とも言える6/8拍子へのリズムチェンジ、或いは戻りテーマ後の半倍テンなど、リズム面でのアレンジのアプローチが多岐に渡っていて大きな聴き所となっています。
'Reza'はManfredo Fest Trioの三作目、あるいはブラジルが誇る実力派女性ヴォーカリスト、Elis Reginaの"Samba, Eu Canto Assim"といった重要作の冒頭を飾ったナンバーとして名高い楽曲です。またブラジル人ミュージシャンに留まらず、Elvin Jonesなどアメリカのジャズメンからも取り上げられているワールドスタンダードでもあります。本作では、オーソドックスにソロを取った後の戻りテーマ直前に挟み込まれたブルージーなヴァンプが耳に残ります。
6曲目、'Balanço Zona Sul'は、全体的にゆったりとしたボッサ調の演奏であるが、1コーラスのピアノソロ後、唐突にハイテンポな高速サンバへとリズムチェンジを展開するくだりが非常に劇的な効果を上げているように思います。続く'Saudade'は前の曲とは対照的で、性急なイントロから一転してゆったりとしたテーマ部へと移行。さらにソロ後のテーマ部にもこのパートが導入されるわけですが、こういった「一時的なリズムチェンジ」が楽曲に大きなフックをもたらしていると言えるのではないでしょうか。
アルバム終盤は、Zimbo TrioのベーシストLuis Chaves作曲の'Amor De Nós Dois'、ミドルテンポの'Raízes'と畳み掛け、最後は実兄Adilson Godoyのオリジナル'Só De Saudade'によって小気味良く幕を閉じることになります。
全体の雰囲気は、何度も言及してきた通りManfredo Fest Trioの3rdに似ているような気がします。高速のジャズサンバグルーヴであり、要所要所を締める効果的なアレンジであり、まさにこれぞジャズサンバといった上質の演奏が満載された好サンプルです。
(2007.10.25)