ジャズサンビスタス
1966
Som/Maior
第一作目ではホーンセクションを交えたビックバンドによるアレンジも随所に聴かせたピアニストJosé Briamonte(ジョゼ・ブリアモンチ)率いるSansa Trio。セカンドにあたる本作では、ドラマーにAirto Moreira(アイルト・モレイラ)を迎え、全ての楽曲をトリオ編成で演奏しています。
僕自身がこのSansa Trioを初めて聴いたのはSom Livreから再発されたファーストが先でした。同再発シリーズはSambalanço Trio、Sambossa 5、Sambrasa Trio、Bossa Jazz Trioといった名立たるジャズサンババンドの強力盤が目白押しで、その中にあっては悲しいかな、Sansa Trioのファーストはいささか地味な印象がしてしまい必ずしも高い評価をしていませんでした。しかし、たまたまタワレコでこのセカンドを試聴できる機会があったので何の気もなしに聴いてみると、どうでしょう。とても同じバンドとは思えない充実ぶりを耳にし、文字通り1秒もためらうことなく買ってしまった次第です。各曲のさわりだけ飛ばし飛ばし聴いていって、聴き始めてから買おうと決めるまでその間一分もなかったのではないでしょうか。そういった決断をさせる作品というのもなかなか出会うことはないものです。
この作品には、その時自分がジャズサンバに求めていたものすべてがおさえられていたように思います。つまり、スタンダードを中心とした選曲、アップテンポな曲調、そして強力なジャズサンバグルーヴといったポイントを網羅していたのです。しかし本作"Vol.2"の聴き所はなんといってもAirto Moreiraによる変幻自在のドラミングにあるでしょう。1960年代の末に渡米し、Miles Davis、Chick Coreaといった超一流と呼ばれるジャズのビックネームと次々に共演を果たし、彼らが当時取り組んでいたジャズの新しい試み(エレクトリックジャズ〜フュージョン)をその多彩なパーカッションサウンドで支えたAirto Moreiraというミュージシャンの、ブラジルにおけるジャズサンバ時代の中でも一、二を争う内容であることは疑いようもありません。
歌心のある伴奏、尽きることのない技の数々、そしてなによりサンバというリズムのうま味を余すところなく伝える躍動感溢れるグルーヴ。Chick Coreaの"Return To Forever"あたりのドラミングに親しんだ人がこのドラミングを聴いたらあるいは少し面食らうかもしれません。それ程、本作のAirto Moreiraは嬉々としてドラムを叩いているし、"Return To Forever"ではビジネスライクに徹していることがよくわかるのですから。
Airto Moreiraは、このSansa Trioの他にもSambalanço Trio、Sambrasa Trioというコンボでもドラムを叩いています。バンドとしての知名度としてはそちらの方が上かもしれませんが。そこで共演しているのがHumberto Clayber(ウンベルト・クライベール)というベーシストで、ジャズサンバシーンでも指折りの名手として名を馳せる存在なのですが、本作におけるベーシスト、José Ordoñez(ジョゼ・オルドニェス)のプレイはそれに負けず劣らずのアグレッシブな伴奏を展開しています。前述のコンボではHumberto Clayberのプレイがどんどん前に出てくるためアンサンブルは三者の火花を散らすような闘い、といった印象を受けるのですが、一方、こちらのトリオではドラムを引き立てることで全てが上手い具合に混ざり合って調和しているような印象です。これにはリマスタリングの効果もあるのでしょうか、ピアノ、ベース、ドラムのバランスがとても良くて、いや、というより、ドラムについつい耳がいってしまう音作りになっていて、ファットなベースの音色と相まってリズム隊が図太い音圧を獲得しているため、圧倒的な聴き応えがあるのです。このアルバムを聴いて感じるのは、まさに「骨太」というイメージ。演奏内容と音のバランスが相乗効果をもたらしていて、その小気味良さについついまた再生ボタンを押してしまうのです。
ジャズサンバという音楽の魅力が存分に発揮された傑作です。
(2007.11.25)