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ジャズサンバとは

レビュー

Sambossa 5 / Sambossa 5

Sambossa 5 / Sambossa 5

tracks:

  1. Ela Vai, Ela Vem (2:15)
  2. Diagonal (1:59)
  3. Baiãozinho (2:32)
  4. Samba De Verão (2:20)
  5. Corcovado (4:02)
  6. Tristeza De Nós Dois (2:18)
  7. Matias Matos Blues (2:38)
  8. Sambossa 5 (2:23)
  9. Rosita's Farm (2:44)
  10. Sambaquí (2:45)
  11. Indeciso (2:08)
  12. Tensão (2:32)

member credit:

  • Magno D'Alcântara (trumpet)
  • Kuntz Adalberto Naegele (saxophone)
  • Luiz Mello (piano)
  • Humberto Clayber (bass)
  • Turquinho (drums)

release year:

1965

label:

Som/Maior

review:

Sambossa 5と書いて「サンボッサ・シンコ」と読む。5という数字が示している通り、五重奏のコンボです。トランペットとサックスという組み合わせからなる典型的なハードバップのフォーマットを踏襲していますが、演奏はこの時代のジャズサンバそのもの。ピアノトリオ、或いはビックバンド編成による作品が多いジャズサンバシーンの中にあって、こういった金管楽器を中心とした小編成のコンボは稀少です。すぐ思い浮かぶバンドはConjunto Som 4、Meirelles E Os Copa 5、Os Cinco-Pados、Luiz Loy Quintetoといったところでしょうか。Sambalanço Trioをバックに従えたRaulzinhoのソロ作も挙げることが出来るかもしれませんが。このSambossa 5の演奏からは特にカラッと晴れたような爽やかな空気感が漂うように思われます。

トランペットはMagno D'Alcântara(マグノ・ダルカンタラ)。Maguinho(マギーニョ)とも名乗り、Luiz Chaves、César Camargo Mariano、Sansa Trioなど数多くのレコーディングセッションに名を連ねています。弟のCarlos Alberto D'Alcântara(カルロス・アウベルト・ダルカンタラ)は先ほど出てきたOs Cinco-Padosのサックス奏者でもあります。一緒にバンドやればいいのにね。兄弟の仲に割って入ったサックス奏者はKuntz Adalberto Naegele(クンツ・アダウベルト・ナエジェーリ)。こちらはErlon Chavesの"Sabadabadá"への参加で知られています。

ピアノのLuiz Mello(ルイス・メウロ)とドラムのTurquinho(トゥルキーニョ)は、Magno D'Alcântaraと共にアルゼンチン人サックス奏者Hector Costita(エクトル・コスティータ)のハードバピッシュな佳作、"Impacto"のレコーディングセッションに参加しています。このセッションが土台となってSambossa 5が結成されたのか、単にSambossa 5のメンバーが招かれたのかは鶏が先か卵が先か、定かではありませんがとても関連深い作品になっていることは明らかです。

さて、このSambossa 5というバンドにおける最大の聴き物はジャズサンバシーンを代表するベーシスト、Humberto Clayber(ウンベルト・クライベール)のバッキングにあるでしょう。Manfredo Fest、Sambalanço Trio、Lennie Dale、Raulzinho、César Camargo Marianoのオクテート、Sambrasa Trio。名前を挙げただけでも畏れ多い最重要アーティスト/トリオのベースを一手に担い、後にアメリカのジャズピアニストOscar Petersonからも誘いを受けた当代きっての名手ですが、そんなHumberto Clayberの代表的な演奏がここには収められているのです。

拍の頭とそのアウフタクト(アップビート)を主体としたジャズサンバの定型的なベースパターン(文字にして表すと「ボーンボボーンボボーンボボーン(ボ)」といった感じになるでしょうか)に囚われず、かなり奔放に動き回るバッキングなのですが、それでいてジャズサンバのウマミであるところのグルーヴ感は少しも損なわれないという離れ業をやってのけます。特に本作では数ある参加作の中でも一、二を争う好サポートを展開しているように思います。そういったポイントからこの作品を聴くとまた違った聴こえ方がするかもしれません。

一曲目の'Ela Vai, Ela Vem'はRonald BoscoliとRoberto Menescalの共作によるアッパーなジャズサンバ。ソロ中、コーラス毎にワルツと2/4拍子が交互するアレンジが印象的です。戻りのテーマ後半部をダウンテンポさせて終了します。続く'Diagonal'もアゲアゲのアップテンポナンバー。こちらはDurval FerreiraとMauricio Einhornによる共作で、Primo Trioが'Do Jeito Que A Gente Quer'という別名によって録音しています。'Diagonal'という曲名だとJohnny Alfにも同名異曲がある関係上ちょっと紛らわしいです。3曲目の'Baiãozinho'はアレンジャーとしても名高いキーボード奏者Eumir Deodatoが作曲した可愛らしい小曲。女性ヴォーカリストDoris Monteiroがオルガン奏者Walter Wanderleyと共に録音したヴォーカルバージョンが有名ですが、クインテットによるこの演奏も同曲の代表的な録音に挙げてしかるべきクオリティがあると思います。Marcos Valleの作曲による4曲目の'Samba De Verão'は言わずと知れたボッサスタンダードです。ジャズサンバにおいてもよく取り上げられて、「イパネマの娘」と双璧をなす最重要スタンダードであるといえます。5曲目の'Corcovado'は大作曲家Antonio Carlos Jobimが作曲したボッサバラード。同曲はともすると間延びした演奏になってしまう危険性がありますが、Humberto Clayberを中心にスピード感溢れるアグレッシヴなバッキングを施すことによって程よい緊張感を持続しています。'Tristeza De Nós Dois'は先ほどの'Do Jeito Que A Gente Quer'でも共作していたDurval FerreiraとMauricio Einhornのコンビに(おそらくTamba Trioのベーシスト)Bebetoが加わった共作で、「ふたりの悲しみ」という邦題がついています。Wander Sáがデビューアルバムでしっとりと歌ったバージョンとは一味違う爽やかなミディアムテンポのジャズサンバに仕上がっています。

ボッサスタンダードを中心とした前半と打って変わり、後半はメンバーその他のオリジナル曲を中心としたジャズサンバチューンで固められています。'Matias Matos Blues'の作曲はZézinho Alves。情報が限られているため確証は持てませんが、このZézinho Alvesという作曲者はTenório Jr.の名盤"Embalo"やErlon Chavesによるビックバンドもの"Sabadabadá"に参加したベーシスト・José Antonio Alvesではないかと推測しています。また、曲名に出てくる「Matias Matos」は綴りが多少違っていますが、Manfredo Fest Trioなどで活躍した素晴らしいベーシスト・Mathias Mattos(マチアス・マットス)となんらかの関係があるのではないかとも考えられ、いろいろな意味で興味が尽きません。続く'Sambossa 5'はバンドのピアニスト・Luiz Melloのオリジナル。おそらくバンドのテーマ曲という扱いで作曲されたであろうこの曲は、バンドのもつアグレッシヴな音楽性とは裏腹にどこまでもほのぼのとした雰囲気が漂っています。箸休め的な小曲を挟み、この後、前述したZézinho Alvesのオリジナルが2曲続きます。'Rosita's Farm'はイスラム的な音階とともに火の吹くようなグルーヴが襲い掛かってきます。さしずめジャズサンバシーンの'Caravan'といったところでしょうか。'Sambaquí'はいわゆるブルース形式。テーマの演奏後TurquinhoによるArt Blakeyばりのドラムソロがフューチャーされます。'Indeciso'は再びLuiz Melloのオリジナル。'Sambossa 5'で聞かれたリラックスした曲調がここでも前面に出ています。ラストを締める'Tensão'はベーシストHumberto Clayberが作曲したオリジナル。Humberto ClayberのオリジナルはLuiz Melloとは対照的にアップテンポでハイテンションないかにもこのクインテットといった雰囲気です。ご機嫌なグルーヴを堪能させてくれます。

この"Sambossa 5"はホーン入りジャズサンバの中では群を抜いた傑作であると思います。同バンドはこの後2作目も発表していますが、残念ながらCDではリイシューがされていません。最もリイシューが望まれるジャズサンバ作品ではないでしょうか。

(2010.06.11)