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ジャズサンバとは

レビュー

Bossa Jazz Trio / Vol.2

Bossa Jazz Trio / Vol.2

tracks:

  1. Canto De Ossanha (2:38)
  2. Dá-Me (3:21)
  3. Deixa (2:34)
  4. Ternamente (4:02)
  5. Amanhã (2:40)
  6. Sonho De Um Carnaval (2:57)
  7. Vim De Santana (2:52)
  8. De Manhã (2:59)
  9. Zero Hora (3:16)
  10. Desesperança (2:32)
  11. O Amor Em Paz (3:39)
  12. Labareda (3:15)

member credit:

  • Amilson Godoy (piano)
  • Jurandir Meirelles (bass)
  • José Roberto Sarsano (drums)

release year:

196?

label:

Fermata / Som Livre

review:

実力派ジャズサンバトリオ、Bossa Jazz Trio の第2作目はその名も『Vol. 2』。1作目同様、FERMATAというレーベルから発表されています。Bossa Jazz Trioの録音というと、他にElis Regina(エリス・レジーナ)とJair Rodrigues(ジャイール・ホドリゲス)のデュエットライヴ盤『Dois Na Bossa N˚2』の何曲か(おそらく管楽器が入っていない曲目)、同ライヴのCD盤にボーナストラックとして追加されているフランス音源、Elis Reginaのソロアルバム『Elis』など。すべてElis Regina関連ですね。

アルバム冒頭を飾る'Canto De Ossanha'はそのElis Reginaがレパートリーとしていた曲。Aメロの旋律を奏でるのはベース。抑制の効いたピアノリフとは対照的に燃え上がるような熱のこもったベースサウンドが印象的です。サビからテーマの演奏をピアノにスイッチすることで、重心の低い短調のAメロと開放感のある長調のサビとの対比がより強調されているように思います。そのままピアノがセカンドリフ的なリフを弾きながらじわじわと盛り上がっていき、再びサビのメロディを奏でて終了。

続く'Dá-Me'はピアニストAmilson Godoy(アミウソン・ゴドイ)の実兄である作曲家Adilson Godoy(アヂウソン・ゴドイ)のオリジナル。前作でもBossa Jazz TrioはAdilsonのオリジナルを何曲か取り上げていましたが、今作でもこの曲を含め4曲を録音しています。Bossa Jazz Trioの他にはJosé Roberto Trio、Quarteto Bossambaなどにも吹き込みが残されています。Amilsonのクラシックの素養が見え隠れするピアノによる独奏から、ミディアムボッサに移行していきます。簡潔な演奏でソロはありません。

再びアップテンポな演奏に戻り、'Deixa'。ブラジルの有名なギタリスト、Baden Powell(バーデン・パウエル)のペンによる楽曲ですが、この曲もまたElis Reginaのレパートリーとして知られています。2コーラス目からはドラムのピックアップを交えた短かいソロパート。テーマの途中で各楽器をフューチャーしたインタールードを挟むなど細かいアレンジが効いています。

性急なハチロク(6/8拍子:正確には6/16拍子もしくは3/8拍子)のイントロから始まる'Ternamente'はテーマ演奏では静かな曲調に一転しますが、ソロに入ってからはまた徐々に盛り上がっていく展開。ドラムがやたらと強調してくる裏拍のハイハットはどこかジャズ的に聞こえます。短かくテーマに戻りなんとなく終了。

5曲目はミディアムボッサ、'Amanhã'。日本語訳すると「明日」。ボッサギタリストWalter Santos(ワルテル・サントス)と彼の奥さんのTereza Souza(テレーザ・ソウザ)による共作です。ちなみにこの二人の共作では、他にSambalanço Trioの3作目の冒頭曲「Samba Pro Pedrinho」があります。本作の演奏ではJurandir Meirelles(ジュランジール・メイレーレス)のベースソロがフューチャーされており、コーダルでブルージー、リズミカルなまとまりのあるソロが聴けます。ベースソロの後にちょっとだけピアノソロをやって、後テーマは演奏しないまま終了。

'Sonho De Um Carnaval'は、今や大御所のブラジル人シンガーソングライターChico Buarque(シコ・ブアルキ)が若かりし頃に作曲した楽曲です。やはり先に述べた『Dois Na Bossa N˚2』でJair Rodriguesがレパートリーとしていた曲目として知られています。同ライヴ盤と同様のテンポで演奏していますが、こちらの演奏では存分にインプロを展開しています。

7曲目、'Vim De Santana'は個人的にはこのアルバム一番の聴き所。作曲は初期Elis Reginaの代表曲「Menino Das laranjas」と同じThéo De Barros(テオ・ヂ・バーホス)。Airto Moreira(アイルト・モレイラ)、Hermeto Pascoal(エルメート・パスコアル)、Heraldo Do Monte(エラウド・ド・モンチ)を擁したQuarteto Novo(クァルテート・ノーヴォ)の一員として活躍したギタリストで、同カルテットの録音にもこの曲が収録されています。Aメロを元にしたイントロ、リズミカルなリフ上で繰り広げられるヘヴィなAメロから、付点8分音符を主体とした軽やかなBメロに至るまで要所要所にキメがあり大変忙しい内容になっていて、3分に満たない短い演奏ながらも非常に複雑な展開をみせてくれます。譜面に起こしたら104小節くらい必要でした。(一般的ジャズスタンダードなどでは32小節程度であることを考えるとどれだけ凝った構成かがわかります。)

続く'De Manhã'はやはり「今や大御所のシンガーソングライター」Caetano Veloso(カエターノ・ヴェローゾ)が作曲した楽曲。この駆け出しの若い作曲者の楽曲を取り上げるという風潮は当時のElis Reginaによるところが大きいのかもしれません。この演奏のイントロではStan getz(スタン・ゲッツ)がAstrud Gilberto(アストラッド・ジウベルト)と再演した『Getz Au Go Go』というアルバムに収録されている「Summertime」という曲で、ベーシストChuck Israel(チャック・イスラエル)が弾いているベースリフを借用しています。

アルバム終盤は長兄Amilson Godoyによる作曲が続きます。'Zero Hora'は凄まじいテンポのジャズサンバ。ここでのトリオはどんな高速のテンポもバシッとキメる実力を遺憾なく披露しています。続く'Desesperança'も長兄のオリジナル。前曲とは打って変わって厳かな雰囲気の曲調です。全体的に暗い雰囲気で進行していく中にかすかな光明が差し込んでくるような微妙なコードワークが複雑な陰影の妙を描いているように感じます。意外と味わい深い曲かと。

'O Amor Em Paz'は前の曲の重々しい雰囲気を打ち払うかのようにミディアムテンポのやさしい雰囲気。ブラジルが誇る偉大な作曲家Antonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)によるけっこう有名なボッサスタンダード。邦題は「平和な愛」。ジャズサンバ関連ではアメリカ人アルトサックス奏者Cannonball Adderley(キャノンボール・アダレー)の演奏が有名です。この演奏では本作2度目となるベースソロ。やはりコーダルでブルージーな語法で、どこかジャズベーシストRon Carterの影響なども感じられなくもないような。

アルバムのラストは'Labareda'。3曲目の'Deixa'と同じくBaden Powell作曲です。サンバのパレードのような賑やかなイントロ。高音域のブロックコードによるテーマの演奏など、華やかな雰囲気が印象的です。この曲の聴き所はドラムソロ。ドラムのことはよくわかっていませんが、マーチングドラムで鍛えたようなスティックさばきとスネアの使い方、ソロ終わりのサンバパターンなど、このJosé Roberto Sarsano(ジョゼ・ホベルト・サルサーノ)のドラムソロは聴きどころ満載です。ちなみにこの御仁、ナイスガイ。ジャケ右側のひとです。

全体を通してみると、『Dois Na Bossa N˚2』その他、当時のElis Reginaの影響が色濃く出ている作品であるように感じます。裏エリスとでもいうべきか。逆に言えば、ブレイクした当初のElis Reginaはジャズサンバ/ボッサジャズのミュージシャンによって支えられていたことを証明する作品と言えるかもしれません。

(2012.08.25)